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はっと気付いた時、ソレとの距離が随分と開いていた。
彼はソレを追い掛ける。
国境を越え、幾分か足場が悪くなってきた道を必死で進む。
木の枝で肌を切ろうと構わず、前を行くくすんだシルバーを見失わぬよう、進んでいく。
「師匠……待って………!」
「………」
何をそんなに急ぐのか、ソレの歩みは早い。
特に国境を越えた辺りから、速度が上がっている。
悪路に慣れていない彼が着いて行くのが困難な程。
「師匠!」
もう一度呼ばれた時、ソレは漸く歩みを緩めた。
そして振り返り、無言で彼が追い付くのを待った。
相変わらず、真紅の双貌からは感情が読み取れない。
ソレが歩みを止めてすぐに、彼が追い付いた。
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