第二章

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魔獣の多い深く暗い森に入っていったソレを追い、彼も森に入った。 そこは草木が所狭しと生い茂り、日の光が殆んど入らない状態であった。 何処からか不気味な遠吠えが聞こえて来る以外は無音の森である。 彼は何の考えも無しにそこに踏み入れた事を今更ながら後悔した。 剣士と言えどもまだ見習いである自分が魔獣に襲われた時、対処しきる自信がなかったのである。 もし仮に魔獣を倒せたとしても、かなりの苦戦を強いられ致命傷を負う可能性だって十分にある。 否、無傷である可能性の方が遥かに低い。 がさり。 彼が考え事をしている間に、そんな音が草陰から聞こえてきた。 慌てて振り返るが何もいない。 だが、彼に向けられた殺気の篭った視線だけは全身で感じ取る事ができた。 ───魔獣だ。 全身から嫌な汗が吹き出る。 腰にある剣を握る手が震えている。 姿は見えなくとも、そこに存在する。 己の空腹を満たす為に彼を襲おうと、静かに機会を伺っているのだ。
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