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「なんで前髪伸ばしてるんだ? 無いほうが断然似合ってると思うけど」
苦笑いして彼女は言った。
「容姿がいいだけで男が寄ってくるのがイヤだった。こうしてれば誰も近付いてこないでしょ?」
前髪が目を覆う。
携帯の待ち受けにしてたら、このアイドル誰と訊かれるくらい可愛かった。
「容姿が良いことを利用する人がいるのと、それを苦に思う人もいる。前者的な性格だったらラクだったんだろうけど、私は後者的な性格」
やっとハンバーガーを食べ終えて、ポテトに手をつけ始める。
ポテト食べたい。ポテト食べたい。食べたい食べたい食べたい。
以心伝心したのか彼女がポテトをオレのトレーに乗せてくれる。
「サンキュ!」
ポテトを食べるオレを物珍しそうに見てくる。
ポテトでご飯五杯も食ったとき、我が子を見る目じゃない両親の反応を見て以来他人の視線がまだ優しいことに気付いた。
「ポテト……好きなの?」
「ああ大好きだ! ご飯を降板させてポテトを主食にしたいくらい好きだ!」
「変わった人。ジャンクフードは体に良くないよ」
「小さい頃から両親親戚友達に同じことを言われてきたが、至って健康だ」
腕の筋肉を見せる。
よく鍛えてるのかと訊かれるが純百パーセントナチュラル筋肉だ。
「油断してると痛い目見るよ」
「そうだな。油断して昨日みたいに制服の袖を切られ兼ねないからな気を付ける」
いきなり机をダンッと叩いて立ち上がり、
「帰る」
かなりご機嫌斜めでマックを出て行った。
「からかい過ぎたか」
ポテトを口に流し込み急いで後片付けしてマックを出るが伊織さんの姿はどこにもなかった。
ちょっとした罪悪感を感じる。
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