第一章・―或る夜の依頼―

12/21
前へ
/210ページ
次へ
 隆は自分の内の、真実の答えを知るのが怖かったのだ。  その答えを知ってしまえば、”生きる事さえ許してくれなかった女性(ひと)”が隆に抱いていた思いを、肯定するような気がしていたからだ。  物思いに耽りながら歩いていると、公園の出入り口付近でふと、ある気配に気付いた。 「……人の、気配?」  深夜である今時分に、こんな公園の中に人の気配を感じた隆は、警戒しながらもそちらの方へと近付いていった。 「誰か、いるのか?」  低く、そして静かに言うと、側の茂みから物音がした。  茂みに入っていくと、そこには血まみれで倒れている男がいた。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1581人が本棚に入れています
本棚に追加