第一章・―或る夜の依頼―

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 娘を護れと言われても、肝心の楓の居場所さえ、隆には検討もつかない。  途方にくれていると、いきなり周囲に複数の殺気を感じた。  ゆっくりと立ち上がると、その殺気を感じる方向に全神経を集中する。  それと同時に、何かが飛んでくる音がして、紙一重でそれを避ける。  小さく舌打ちすると、音も無くその場を移動し、相手の気配を探るため。気配を殺しながら、相手の次の動きを待つ。  すると再び、今度は違う場所からナイフが飛んできた。  服装を一瞬の内に闇に紛れさせると背後に素早く回り、のど元に相手が投げてきたナイフをつきつけた。 「俺に何の用だ」  静かに、そして低い声で簡潔に質問をした。
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