『Ａssassin.―暗殺者―』

第一章・―或る夜の依頼―

　すると女は、隆を見て尚も笑った。
「楽しくないの？　坊や、貴方が望まなくてもゲームは既に始まっているの。無駄に人殺しをしたくはないのなら、ゲームに参加する事ね」
　女がそう言って、背後にいる男に合図をすると、男は音もなくその場から消え去った。
　続いて女も闇の中に消えようとする時、懐の中から一枚の紙切れを取り出して、それを側の樹にカードを沿えて投げ付ける。
　隆がその樹に刺さった『ジョーカー』のカードを確認した時には、女の姿も完璧に闇に紛れていた。
「坊や、貴方には少しだけ不利なようだから、ハンデをあげるわ。紙に書いている住所が、娘が住んでいるところよ。せいぜい護ってあげなさいな」
　闇の中から女の声がこだまして、ゆっくりと消えていった――。