第一章・―或る夜の依頼―

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 男はそれに脅えながらも、懸命に首を振った。 「殺すつもりは無かった、本当だ! 信じてくれよっ」 「なら、お前は殺すつもりが無かった人間を、苦しめて殺すのが癖になっている。とでも言うつもりか?」  一瞬にして男の顔が青ざめる、先程までより更に大きく体中を震わせて、首を振り続けた。  暗殺者はそれがさも可笑しいとでも言う風に、笑いを漏らす。 「殺される側になるのは、怖いのか? ……仕方無いな」  そう言って暗殺者は刀身を鞘に収め、立ち上がった。 「じ、じゃあ」  助けてくれるのか、と男が言うと、暗殺者は身を翻して言った。
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