第一章・―或る夜の依頼―

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「誰もそんな事は言っていない。お前があの時したように、苦しめて殺してくれと言われたが。せめてもの情けに、苦しみの少ないよう殺してやると言ったんだ」 「い、嫌だぁっ。俺は死にたくない、死にたくないんだよ! 何でもするっ、何でもするから、助けてくれぇっ」 「本当に、何でもしてくれるのか?」  暗殺者が男の言葉に反応すると、男はそれこそ、壊れた人形の様に頷いて言った。 「あぁ、何だってするっ。強盗だって、詐欺だって……アンタが望むのなら、殺しだってするよ!」  暗殺者は黙って男の方に向き直り、静かに答えた。
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