第一章・―或る夜の依頼―

7/21
前へ
/210ページ
次へ
「例えば、何かモノが欲しいと言えば?」 「あぁ、何でもだ! お前が欲しいと言うものなら、何でも用意するよ」  暗殺者は男に冷ややかな一瞥をくれてやると、刀の柄に手をやる。  同時に、暗殺者は男の前に大きく一歩踏み出し、男を一閃した。  ゴトン、と男の胴体から落ちた首を見詰めながら暗殺者は呟いた。 「……俺は、お前の命が欲しいんだよ」  その体から鮮血を迸らせても尚、生きているかのように痙攣を繰り返しながら、男の胴体は地に倒れ込んだ。  その鮮血を一身に浴びながら、暗殺者は刀をまるで、そこには何も無かったかのように消し去る。  そして、無言のまま闇に溶け込むようにして、その場を立ち去った。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1581人が本棚に入れています
本棚に追加