第一章・―或る夜の依頼―

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 先程から彼が使っている、人間のモノとは違う能力のせいで、この生活を続けている。  何時ばれるとも知れぬ能力を抱え、表の世界で生きる事を諦めた彼は、裏の世界で能力を駆使して生きていた。 「これで、何人目だ」  隆は自分の両手を見詰め、呟いた。  疎ましく思っていた能力を使い、隆は生き続けているのだ。  そんな自分を、生きる価値も無いと思い込んでいる隆は。何か特別の事情でもない限り、依頼人とじかに接触する事は避けていた。  何も無い空間から物を作り出し、または消し去ったり出来る能力。  隆自身を全く別の人間に変え、時には性別さえも、変えてしまう事の出来る能力。
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