第三章

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 白狸村は、山間にある小さな村だ。名物は、景色と温泉。この時期は桜が満開になる。普通の桜なら、何処でも見る事ができるが…  「真っ白なんですね。」  さすがの秘書も驚いている。  「そ、狸が浄化してるからな」  小沢晴美君が、取ってくれた宿は、狸が祭られている社の近くだ。窓から滝が見え、その滝の周りを桜が埋めつくす。  「本当に、綺麗ですね。…教授?どうしました?」  「……お前が変な事を言うから、本当に部屋が一つじゃねぇかっ!」  部屋自体は広く、寝室は別にある。問題は…。  「大きなベッドですねぇ?二人で寝ても大丈夫そうですね。」  「言う事はそれだけか?宗っ。お前が余計な事を言うから、本気にしたじゃねえかっ!」  すると宗は、俺の耳元で囁いた。  「……え?」  その言葉に驚く。黙っていると、宗が俺の腕を取った。  「じゃあ、狸さんの御社にお参りしましょうか。その後、小沢さんのお祖父様のお墓参りに行きましょう。」  「…ああ。」  俺はそのまま腕を捉まれながら部屋を後にした。俺の聞き違いでなければ、宗はこう囁いた。  ¨話を聞かれています。そのまま話を合わせて、部屋をでましょう¨
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