第七章

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 「元々、炎月に頼まれて、蛇の変わりにみずちを神に据えるため、この村にやって来ての。本来じゃとこの仕事は、法皇の仕事じゃったが、丁度坊は、勉強を始めたばかりでな、まだまだ法皇の仕事は無理じゃった。ワシは天界の神が、欠員している場合、その神の代行者として動いていた。じゃから、蛇退治にワシが出向いたんじゃ。……その後の事は、小僧も知っておるじゃろ?」  白狸(はくり)村の伝説に繋がる。  「……でも、狸は強いんだろ?何で五百年の寝ていたんだ?」  「寝ていたわけではないんですよ。教授。」  狸の替わりに宗が答える。  「退治しようとした老師は、本当は跡方も無く蛇を消し去る予定でした。しかし、うっかり倒す時に、蛇の血をみずちの卵にかけてしまった上、この地も汚してしまい、浄化と卵を守るため、こちらに残っていたんです。」  「それと、あの娘に寄生した蛇をなんとか切り離そうと思っての……結局は無駄じゃった…。ワシが出来る事と言えば、卵を守り、娘が村人を襲わないように、監視する事。………そして、時が来て坊が法皇になった時、寄生された身体ごと、罰してもらうのを待つだけじゃった。」  …たとえ娘達の魂を犠牲にしてもの……。最後の言葉は、消え入りそうな小さな声だった。俺は、狸の身体を抱き締めて言った。  「……宗に裁かれて、娘さん達、やっと安らかに眠れたんだ。‥良かったな。狸。」  俺が言葉を掛けると狸は、泣き笑いの顔で言った。  「……ありがとう。小僧……。」
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