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「どうしたんですか?浅見さん?」
「ああ、先生!すみませんでした!奈波!村の花が!」
よほど驚いたのだろう。言っている事支離滅裂だ。
「落ち着け。どうしたんだよ?」
「と、ともかく!滝の所に来てくれ!!」
浅見さんの腕をぐいぐい引っ張る。
「先生、悪いが後で来てもらえますか!」
「はい。出発の準備出来次第、滝に行きます。」
神事も中止になり、今日帰る事になった。
「それじゃあ、又後で!」
奈波さんは、浅見さんに連れられて、部屋を出て行った。
「………さてと。」
俺は、寝室の部屋のフスマを開けた。
「狸。宗は?」
「ん?まだ正気に戻っとらんの。世程ショックだったんじゃなあ。」
うりゃっ。と言いながら狸がジャンプして、宗の頭を尻尾で叩く。
「……ひどい………。」
ぽつりと宗が言った。
「おっ。やっと戻って来たか。」
「……自分が天界に居た時は、¨お前が大きくなるまで待て¨とか言ってた癖に。………人界に来て随分、遊んでいらっしゃるようですね……?」
ゆらりと立ち上がる、宗の後ろに、どす黒いオーラが見えるのは気のせいか?
「あ、あの?法樹君?落ち着いてクダサイ?」
俺は、後退し始める。ヤバい!目がマジだ!
「落ち着いていますよ?……翠樹 薬嗣さん?」
がしっと肩を掴まれ、俺は逃げ場を失った。宗が俺の耳元で、低音の聞くもの全て魅了する声で囁いた。
「帰ったら、朝迄眠らせませんよ。……薬嗣。」
俺は情けなくも、腰を抜かして、へなへなと床に座りこんだ。………恐い!朝どころか、永遠に眠らさせてもらえない!絶対!!
「こりゃ。驚かせてどうする。」
狸が、俺と宗の間に割って入った。
「老師。」
宗が正気(?)に戻る
「それに、わざわざ帰らんでも、そこに大きなベットがあるじゃろ。」
……狸、やはりいつか、毛皮にして売ってやる。
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