第八章

8/12
前へ
/86ページ
次へ
 「でもこれ、このままで大丈夫なのか?」  春に咲かない花迄咲いているという事は、自然界に影響与えないか?  ¨大丈夫です。¨  ………この声は。  「みずち?」  滝壺を覗くと、淡い光の中から、みずちが現われる。  「龍神?!」  「なに?映画撮影?」  「すごい!」  「何なの?!」  村の人達から、色々な声があがる。みずちがその声を聞いて、頭をぺこり、とさげて挨拶をする。  ¨初めまして。みなさん。私は新しくこの村を、守護をさせていただく事になりました、みずちの白桜といいます。卵の時は沢山、祈りを捧げてくれて有難うございました。¨  「先生、あの龍……。」  いつの間にか、奈波さんが後ろに立っていた。  ¨先生?春神のお名前ですか?¨  みずちが興味深そうに聞いてきた。  「…違うよ。俺の名前は、翠樹 薬嗣って言うんだ。」  ¨みどり?春の象徴ですね!¨  ……言われてみたらそうだ。字は違うが、みどりだな。  ¨春神。花々は、今日一日で戻ります。安心してください。¨  又頭をぺこり、とさげて滝壺に消えて行った。わざわざ自己紹介しに来たんだな。律儀なみずちだ。  「……教授、知りませんよ……。」  「何が?」  「……ここに居るのは、ほぼ、村の人達全員ですよ。」  ………そうだった。昨夜と同じ様に、みずちと会話していたが、今日は……俺は恐る恐る、後ろを振り向いた。……村人の皆さん、目をキラキラと輝かせていらっしゃる……。  「宗。」  「何です。」  「………俺を連れて、逃げてくれ。」  「……………無理です。」  宗は俺を見て、にっこり、きっぱり、言い放った。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1547人が本棚に入れています
本棚に追加