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「返せよ。」
俺は立ち上がり、宗に詰め寄った。
「……さあ?どうしましょうか?」
意地の悪い笑みを浮かべながら、石を持ち上げる。193cm有る宗が、手を挙げると、2mを越える。俺が届くわけがない。
「あっそ。じゃあ、いらねえよ。」
俺は、旅館に向けて歩き始めた。
「……。良いんですか?」
以外そうな顔をして、聞いてくる。
「さあ?俺は構わないけど?……新聞沙汰にはなるかもな。大学教授、歩く度に人々を気絶させる?!……どっかの実験室に監禁されるかな?短い間お世話になりました。」
淡々と喋りながら、俺は歩くのを止めなかった。
「坊。お前の負けじゃ。返してやれ。」
楽しそうに笑いなから狸が、俺に駆け寄った。
「……はい。」
物凄い残念そうな上、物凄い嫌そうに、俺に石を渡した。
「……小僧。その石、誰からもらったんじゃ?」
俺をよじ登りながら、狸が聞いてきた。
「これ?子供の時、もの凄い格好いい人に貰った。今の俺位の年の人で、優しくて、料理上手な人でさ。昔、ニュージー・ランドに居た時のお隣さん。そういえば、あの人にも俺の体質、効かなかったな?」
「……そうか。ニュージー・ランドか……。」
その時、何故か狸は遠い目を空に向けて、旅館までの帰路、黙りこくってしまった。
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