最終章 水魚の交じはり

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最終章 水魚の交じはり

 少し時間をさかのぼり天界 三帝の住まう宮               「……あいつ。携帯切りやがった。」  「!!うそーんっ!俺まだ話して無いっ!」  「か……じゃなく天狗(てんこう)に会いに行くっ!」  水月と風月が、宮を飛び出そうとする。  「何処に行くつもりですか?」  いつのまにか、背後に長身の男が立っていた。  「黄牙(こうが)」  「黄ちゃん。」  水月と風月が、青くなる。  「……永天帝水月様。永人帝風月様。お二人供、ここ数週間私が居ない間、お仕事が滞っているようですが?」  じろりと、黄牙に睨まれ二人の帝は、ますます青くなる。  「お帰り。黄。白銀(しろがね)と黒羽(くれは)は?」  炎月の言葉を受け、黄牙は、膝を折り挨拶をする。  「金(こん)の聖獣、黄牙、ただ今戻りました。後程、銀の聖獣白銀、黒の聖獣黒羽も帰郷いたします。」  「……頭を挙げよ。ご苦労様。黄。」  黄牙が立ち上がる。  「有難うございます。」  「黄ちゃん。僕の聖獣なのに、なんで、炎月に報告するの……。」  青くなりながらも、不服そうに水月が言った。  「当たり前です。私が不在の間いつも、お二人方の仕事をこなして下さっているのは、どなたですか?」  「炎月デス……。」  声を揃えて顔色の悪い、二人の帝は応えた。  「炎月様。後は私がこの二人を引き受けますから、どうぞ、老師にお会いしてきてください。」  三人のやり取りを黙って聞いていた、炎月は、苦笑しながら答えた。  「いいよ。携帯を切った時点で、未だ帰ってくる気がないようだし。……それに、あの子にはまだ好きにさせてやりたいしな。…心配してくれて有難うな。黄。」  「いいえ。さ、お二人とも、さくっと仕事していただきますよ。」  二人を引き摺りながら、黄牙は、室を後にした。一人残された炎月は……。  「元気な声が聞けて嬉しかったな。」  どこまでも暖かな笑みで炎月は、呟いた。
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