母親の死

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母親の死

翌年ソイツは学校には来ていなかった。母親が交通事故で重体らしい。俺はまだ信じられず、椅子から転げ落ちてしまった。そして親につれられて病院に行った。病室では三男が号泣しててソイツは見ているだけだった。ベッドの母親を見ると眠っていただけで三男はそれを見て死んだと勘違いしたらしい。俺はソイツに良かったな!と言ったが返事が返って来なかった。後から聞いた話ではもうその時に余命1ヶ月と言われてたらしい。しかも自分が事故をしたわけじゃなく助席に乗ってたらしく運転手が飲酒運転してたそうだ。運転手は無事でソイツの母親に普通は謝罪と慰謝料を払うべきだが引っ越ししたそうだ。そんな事を聞いていてもソイツは怒らず黙っていた。俺は泣きながら「なんで怒らないんだよなんで泣かないんだよなんでだよ!」 そうするとソイツは「泣いたってしょうがないじゃない。起きた事はしょうがない。母さんがせめて生きている間だけでも幸せに生きて欲しいから俺は泣かない」泣きながら笑っていた事を今も良く覚えている。そしてソイツは毎日小学校が終わると見舞いに行っていた。そしてソイツの母親は死んだ。46歳だった。近所でも評判の肝っ玉母さんだった。俺も良く世話になった事を良く覚えている。葬式の日、親に連れられて式場に行き手を合わせていた。ふと周りを見るとソイツとソイツの家族がいた。家族は泣いていたがソイツは泣いていなく逆に明るく接していた。葬式が終わった後、ソイツが俺の前でめっちゃ泣いていた事を今でも思い出す。そして次の日、学校に行くとソイツは死んだ事を忘れたような顔で俺に近づいてきた。しかしやはり俺には空元気にしか見えなかった。そしてソイツの家族はその日から泥沼に墜ちる。
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