夢の街

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あまりにもその街に相応しい容貌だが、何故か違和感を感じるその猫に私は大いに興味を持った。 街路を歩いている獣人に、 「あの仔猫は何て名前だい?」 と声をかけた。 すると獣人の青年は大袈裟に頭を垂れて、 「初めまして、美しい人。あの猫はピアと言ってね、少々変わり者なんだよ」 と言った。 「ピアか。ありがとう」 私は獣人にお礼を告げると早速ピアの元へ歩いていった。 私が傍によると、ピアは真っ直ぐな澄んだ瞳で私を見据えた。 「初めまして、ピア」 ピアの視線に合わせて私は座り込みながら言った。 ピアは私をゆっくりと眺めたかと思うと、急に怪訝な顔になり、 「君、生きている人なのか?」 と鈴の音の声で言った。 その突発的な問いにいささか困惑したが、私は、 「ああ、そうだよ」 と答えた。 するとピアは大きくため息を付いて、 「・・・・まずいなそりゃ」 と何だか妙に人間くさい言い方をするので思わず吹き出してしまった。 ピアはすかさず、 「おい、初対面の方に対して失礼極まりなくないか!?」 と怒ったような表情(に見えた)をした。 私は、手を顔の前に合わせて、 「ごめんごめん。君の言い方があまりにも面白いからつい、ね」 と言い、「ところで何であんな質問をしたんだい?」 と訊いてみた。 「・・・・・・・・・・・それは、ここが」 ピアが言いにくそうな表情をして、「死の街だからさ」 と告げたのである。
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