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「死の街?ここが?こんなにも美しいのに?」
到底信じられなかった。
だってここは私の憧れの夢の街。
噂通りの美しい街だ。どこをどうやったら死の街などといえるのだろうか。
「まあ、信じられないのは無理ないよ」
ピアが慰めるように言ったが、「でも事実だよ。ここは死の街、哀しみの街。君は着ていけないところに来てしまったんだよ」
と私にとって厳しい現実を突きつけてくれた。
ピアは私を元の所へ返すと案内役を買って出た。
途中途中ピアと他愛のない話をした。
「どうして君はこの世界にあこがれたの?」
「絵本の世界が好きだからだ」
「そっか」
「この街にいる者は死んでいるのかい?」
「うん、そうだよ」
ピアは言った。
「この世界はね、死んだ者が来る世界」
「じゃあ、ピアも?」
「うん、そうなるね」
「でも、なんか他の連中とは違うね」
この街は確かに美しい。だが、人々はどこか芝居じみていて落ち着かなかった。
そんな中ピアは芝居じみてなく、とても話しやすかった。
ピアは耳を伏せて、
「―――だね」
と何か呟いた。
「え?」
私は聞き返したが、ピアは何もなかったように、
「それは僕が変わり者だから」
と言った。
それからしばらく歩き続けた。
街は綺麗で美しくて、でもどこかに違和感があって。
やがて小さな広場に着いた。
私が物珍しいのか、街の者がじろじろと見てきて気後れした。
ピアは、
「構わない方がいい。君のためにもね」
と言った。
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