夢の街

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ピアはなんだかちっぽけな猫なのに私を必死で守ってくれている感じがした。 私はなんだかとても嬉しくなった。 ふと、私はポケットの中に何かが入っているのに気づいた。 これは、と私は呟いた。 「どうしたの?」 首を傾げながらピアが言った。 私はポケットから綺麗な淡い虹色のリボンを取り出し、ピアに付けてやった。 「似合うだろ?あげるよ友達の印」 「わあ、ありがとう」 ピアが嬉しそうに尻尾をぴんとたて、「じゃあ、ここでお別れだよ」 と広場の噴水を向きながら唐突に言った。 「え?」 「君はここにいてはいけない」 ピアノ真っ直ぐな瞳が私を射た。「いいね?君は僕にとって命の恩人だ」 ふと、ピアの瞳を見て思い出した。 いつも私に優しく童話の話をしてくれた幼なじみ。 その子は異国の子でいつもいじめられていたはずなのにいつも笑っていて私に優しかった。 そして、双方の瞳の色が違っていた。そう、ピアの様に。 確か、16になる前に・・・。 「ピア・・・貴方は・・・」 いつの間にか私の周りに光の粒子が漂うのに気がついた。 自分が透けていくのに気がついた。 帰れるのだ。 でも。 「ピア、もしかしなくても貴方は・・・」 ピアはにっこりと笑って、 「頑張るんだよ。例え何があっても君は君の世界を信じなさい。きっといつか周りは認めてくれる」 と言い、「僕は君の味方だよ。いつまでも永遠にね」 そう、ピアは私が大好きだった・・・・・・。 はっと気づくとそこはロンドンだった。 私はしばらく呆然と立っていた。 すると、一人の男性がやってきて、 「大丈夫ですか?」 と声をかけてきた。 「え?」 私はそこで初めて気がついた。 自分の頬に熱いものが流れていることに。 そう、今は1955年。 戦争が終わり10年がたった頃だった。
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