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時は2002年の夏。
子供が元気に駆け出す。
何せ明日から夏休み、子供が駆け出すのも無理はない。
宿題もたくさんあるというのに他の遊ぶことを考えるとそんなことは吹っ飛んでしまうのだ。
その中、一際目立つ可愛らしい女の子が古本屋の前で立ち止まる。
そして一つの本に目を付けた。
『夢の街』
本屋の中から若い女性が出てきて、子供を見た。
優しそうな女性に女の子はほっとした。
「この本が好きなのかな?」
「うん!」
「じゃあ、これはお姉さんからプレゼントしよう」
「え?いいの?!」
「ええ。それは私の祖母が描いたものだからね」
「へえ・・・凄い!ありがと、お姉さん!!」
女の子はその本を受け取り元気良く駆けて行った。
女性はその光景にふと微笑み、いつの間にか隣にいた、左右瞳の違う男性に言った。
「よくねえ、おばあちゃんが言ってたのよ」
―――昔、夢の街に行ったこと
―――そこであった猫のこと
―――だけどそこは死の街で
―――でも
「おばあちゃんはこう言ったのよ」
―――あそこはやっぱり夢の街だったのよ。
―――だって、私に改めて生きる希望と大切さを教えてくれたから。
「おばあちゃんは死んでしまったけど、でも、いつか私にもいけると思うの」
男性は頷いた。
空はとても青くて綺麗だった。
END
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