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学校の屋上。
勝也は昔から空が好きだった。
嫌な事を忘れられて、心が落ち着く。
誰にでもこうやって意味もなく落ち着く場所ってあると思うんだ。
いるだけで落ち着く場所。
大切な場所。
「なんだか空が近く見える。
僕の寿命みたいに近づいて見える。」
他の人って幸せだと思う。
だっていつ死ぬかも分からないんだからこんなに辛い思いをしなくて良いんだ。
こうやってここにいると……やっぱり羨ましい。
僕だって……周りの人みたいに生きたい。
精一杯生きて、精一杯笑いたい。
それこそが僕の本当に叶えたい夢なのに……。
学校を卒業する事なんかより一番大切な夢なのに……この願いは絶対に叶わないんだ。
勝也はまた泣いている。
涙が止まらない。
叶わない夢だってある。
それは当たり前。
でも叶う夢もある。
それも当たり前。
だから精一杯今を生きる。
勝也は涙を拭った。
「……足音?」
誰かの足音が聞こえる。
彼女は栗田詩織。
クラスメートで、いつも暗い雰囲気の生徒なのを覚えている。
「………えっ…?」
その瞬間だった。
目の前の彼女は、今まさに屋上から飛び降りる為に、鉄柵を登ろうとしているからだ。
「待てよ!」
「離して!
私は死にたいの!」
「簡単に言うなよ!死んでどうなる……?」
「もうこんな生活嫌だよ……。」
「………。」
(何で……?
何でこんなに幸せな人生を送れているのに死のうとなんかするの……?
僕だって……。)
「ふざけんなよ!
そんなに幸せなのに……未来だって有るのに………。
ズルいよ……。」
「言ってる事が全く訳分かんないよ……!」
「今の僕だって……死にたくなくても死ぬんだ。」
「どういう意味よ!?」
「あっ…………。」
(良い……?
この学校にいるなら誰にも……あなたの寿命の事を言っちゃ駄目。)
(この事は母さんと交わした約束だ。
でも……なら、どうしたら…?)
「さっきから何が言いたいの……?」
「死にたいなんて寂しい事言うなよ。
…何でそんな事言うんだよ。」
「私……いじめられているの。
なのに私を守ってくれる人なんて誰もいない。
一緒に笑ってくれる友達もいない。
そんなの嫌だ……。」
勝也は許せなかった。
罪も無い人をここまで追い込むなんて……。
人間って勝手だ。
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