絶望からの再生

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
8両編成の常磐線は前5両までが一級河川の広い川の中へ沈み、辺りは電車から漏れた機械オイルの匂いと満員電車の乗客だろう今は肉の塊と成り果てた血の匂いが混ざり吐き気を誘う匂いが充満していた。いつも最後尾に乗っていたのが幸いしたのだ。自然とは不思議なものだ。さっきまでは照りつけるような陽射しだったのに今は雷雲が立ち込め、蝉のオーケストラは全く聞こえなかった。「うぅ…俺は夢を見てるのか?」そんな事つぶやきながら額に手を添えた。痛みは無いけど血がついてる感触があった。夢であってくれと願った俺の気持ちは砕け、例え用の無い不安がこみあげてくる。体が震えていた……。その時である。「おーい!たけ!聞こえるかッ?」良平の大声が聞こえ我に返った。「りょうへい?おーいッ!良平どこだーッ?」俺はきしむ体に無理におこし立ち上がった。「ここだぁ……」その弱々しくなった声は沈みかかった常磐線の6両目からだった
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!