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一人の人物が、息も絶え絶えに暗き森を駆ける。
「…はぁ…はぁ…」
全力で走っても、モンスターの群れを振り切れない。
もとより、走るという動作とは無縁なのだ。野生生物に勝てるはずがない。
─ドンッ!
後ろに下がろうとしたが巨木に阻まれてしまった。
じりじりと囲みながら、大きな口を開けて迫り寄る。
「(…ごめんなさい……!勝手に抜け出してしまったばかりに……父上…母上……)」
覚悟を決めてきつく目を閉じる
「ギャウゥウウッ!」
─ザシュッ!
鋭い鳴き声とともに、引っ掻く音がするが、体に痛みはない。
「…?…」
恐る恐る目を開くと、見えない壁に阻まれて、怒り狂いながら爪を立てる獣の姿が映る。
「フハハハハ!わたしの結界を破れると思うてかァ?犬っころどもめがっ!!」
「《ご、ご主人さまっ!発狂しないでください!!》」
声のする方を見ると、人が宙に浮いていた。否、浮かんでいる箒に仁王立ちをしている少女であった。
「止めてくれるな!シルフィ!!─ククッ…灼熱の業火で跡形もなく焼き尽くしてくれるっ!」
「《ご主人!森を火事にする気ですか!?》」
「当たり前ですよ?」
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