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「そういや紫苑…僕の眼鏡は何処にあるのかな?」
心配そうに紫苑先輩に尋ねた。
「大丈夫、壊れてないから。
その前に髪型崩れてるぞ」
指摘された途端、咄嗟に髪の毛を触る秀先輩。
「これぐらいは大丈夫。時間も遅いので早く帰宅路に入りましょうか」
聞かれた時に、視線が合った。
「えっ、あっ、はっ、ぁい…わかっ、判りまちた!」
噛みまくりだなぁ…私。
………
「さよなら、媛槻先生」
「今日は世話になりました」
「お休み為さい、媛槻先生」
軽く私達からの挨拶を終えた後、
「あんた達、間違っても規則正しくない不埒な行動をしないようにな!」
「ちょ、媛さんそりゃねぇよ!」
紫苑先輩の全否定に、
「ははは…冗談は辞めてもらいたいです…」
秀先輩の苦笑。
ここは私も言い返して良いのかな…
「冗談は紫苑先輩だけで充分ですから~!」
少し冗談を言ってみる。
「オイオイ、まさか騙した事を根に持ってるのか一年?」
少し言える事は…
「当たり前じゃないですか!あんな騙しは反則ですよ!!当分は先輩と言えど─」
あっ
視線が合った。
身体の内側から鼓動を感じる。
「御免なさい!」
「うぉっ!?」
見事に決まりましたグーパンチ。
「うっかり手が…」
視線を合わせずにぼそぼそと呟いておいた。
そうだ。
「仮入部の件はなかったことにしておいて下さい」
「唐突ですね」
「いきなりだなおい」
苦笑している秀先輩と、唐突な台詞に動転している紫苑先輩の表情を伺ってから、
「今回の件も兼ねて、不精ながら皇魅遙は生徒会執行部に本入部することを誓います!」
流石に庇われた分、何か恩返しをしたいと思ったから言い切れた言葉でした。
「ほぅ…何なら明日はかわいが─」
「紫苑」
秀先輩が紫苑先輩に向かって、
「取り敢えず帰宅次第、説教ですからね」
笑みから殺意が漂っていました。
「ははは…私の家は此方の方角です」
先導する魅遙。
それに付いていく双子。
秀は紫苑の肩を借りながら歩み始めた。
「ところで、なんで変装にはまったんですか?」
「それはだな─」
そんな会話をしていた最中…
ふと、秀が二人に気付かれない程度に囁く…
「なんだろう…この唇に残る感触は…?」
彼はあの時の記憶がないままで、その残りし感触が何かを判らずに居た…
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