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「御初御目に掛かりまする事を嬉しゅう存じます。私は魅遙の姉にあたります…魅花で御座います」
深々と丁寧な御辞儀(おじぎ)をする魅花と名乗った女性。
「初めまして。未熟者ながらも生徒会執行部・生徒会長を務めて居ます。林原秀と申します」
笑顔で同じく御辞儀する秀。
その後に紫苑が続く。
「同じく紫苑。こいつと同じ名字で、生徒副会長を務めて居りやす。見ての通りの双子ですんで宜しゅう」
うってかわっての態度。
「秀さんに…紫苑さんですか…只今魅遙は着替えをしに自室に向かって居ますので、こちらへどうぞ…」
そう持て成されかけていたが、副会長らしかぬ素振りだったのが気に食わなかったのか…秀が鋭く、弟の腕を魅花に見えない辺りで抓(つね)った。
「っ!?」
紫苑のその声で魅花に、
「どうかしましたか?」と、問質されたものの…
「気にしないで下さい、古傷が痛んでいるだけなんで」
秀は、紫苑に対してかなり厳しい兄貴である。
「はぁ…そう仰るのでしたら気にしませんが…」
困惑の苦笑を浮かばせていた。
「さっ、さぁ御上がり下さい…」
「御邪魔します」
「失礼しやす」
ふと秀が魅花を見てから疑問に思っていた事を口にする。
「あの…先程から気になっていたんですが…」
紫苑が秀の異変に気付く。
「…はい、何で御座いましょうか?」
しかし既に時遅しの模様。
やっべぇ…秀…ぜってぇあの目は脳内に…
「家内では、基本的に着物を普段着にしているのですか?」
目が完全に逝ってる。
「えっ、あぁ…はいそうで御座いますが…?」
秀はこの時、心の中でどれ程雄叫びを上げただろう…?
「だーめだこりゃ…」
紫苑は秀の怪し過ぎる、その笑みを苦笑して見るしかなかった。
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