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その当人はというと、紫苑の思惑通り…今にも叫び出してしまいそうな程、奮え上げていた。
こんな家庭が身近にあるとは…
コツン
途端に後頭部を瓜二つの弟に小突かれる。
「…痛いですよ…」
「阿呆、現実に戻ってこい」
「何がですか?」
自覚なしの秀に呆れざる得なかった。
「こちらに御座りになられて下さいな」
とある和室に招かれた。
差し詰め茶の間といったところか。
招かれた二人は並んで座る。片や正座、片や胡座(あぐら)で。
勿論前者が秀、後者が紫苑である。
「紫苑、今日ぐらいは正座をして下さい」
「あんたは俺の母親か」
毎回の叱りに突っ込みを入れてみる。
「いえ、貴方のような可愛らしくもない大きな僕似の息子を持った覚えは御座いません」
「はいはい悪かったよ秀」
この変な漫才風のやり取りを見ていた魅花が突如、
「御二方は本当に仲が良ろしいんですね」
「切っても切れない縁がありますからね」
苦笑しながら応える秀。嫌々だからそんなことを言った訳じゃないだろう。
「まぁ双子ということで気にしないでいただいた方が助かる」
紫苑も苦笑気味だった。
「お姉ちゃん、御待たせ」
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