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『みぃちゃ~ん、どーこー』
可愛らしい呼び名を叫んでいるが、それとは合わないドスの効いたような声が響きわたってた。
『先生…呼んでますよ』
『…気のせいだ』
あれから春になり、拓海先生は数学教師として、無事うちの学校へ来ることとなった。
だから、俺、一ノ瀬圭は、必然的に悪魔のしもべになっていた。
今日も強制的に家に連れてこられたのだ。
と言っても、ここはれんの家で、拓海先生なりに、気を使ってくれているらしい。
『そう言えば、なんで強さんは拓海先生のことをみぃちゃんって呼ぶんですか?』
『みぃちゃんて呼ぶな。それに、大した理由でもないし、知らなくていい』
『え~、いいじゃないですか、教えて下さいよぉ』
『誰が教えるか!!大体、俺は…』
『僕がみぃちゃんって呼ぶのはねぇ…』
声の方を向くと、強が立っていた。
『強…、おまえ。絶対言うな』
『あれはまだ君が産まれる前のことだよ』
強は楽しそうに昔話を語りだした。
拓海は、必死に止めようとしたが、無理だと悟り、一目散に逃げ出した。
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