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『一本。それまで』
拓海は数ヵ月見ない間にまた強くなっていた。
強は拓海が嫌いになっていた。
男の自分より強くて、頭も顔もよくて。
いとこなのになぜここまで違うのか、コンプレックスになっていた。
だから、拓海が女であることを忘れていた。
そして、あの日。
彼女は道場の男の子に目をつけられてしまった。
呼び出されたのだ。
―あんなやつ、やられちまえばいんだ。
そう思っていた。
『やあ。拓海ちゃん。ちょおっと、道場裏まで来てくれるかな?』
拓海はものともせず、男たちに向かっていった。
その様子を強はずっと見ていた。
怖くて怖くて、動けなかったから。
-バシッ-
この音が響いたとき、真っ白になった。
そして、泣いている彼女を見たとき分かったんだ。
あいつは女だ。
だから男の俺は、守りたかったんだ。
自分が、自分の力で。
彼女を守りたかったんだ。
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