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あるところに骨董品店がありました。
何の変哲もない店でした。
この店には、足を踏み入れた誰もが手に取る古いオルゴールがありました。
紙幣を二枚つなげたくらいの大きさで、木でつくられた洒落た彫刻がなされていました。
だからこそ質素にもかかわらず、皆が手に取りました。
けれど、買うものはいませんでした。
手に取るものは皆ゼンマイを巻きますが、音がならないのです。
骨董品店に訪れる人の中には、なぜ壊れているものを出しているんだといってくるものもいます。とても素敵なものをみせていただいてありがとうというものもいます。
さまざまな人が訪れる骨董品店でした。
ただ、ごく普通の骨董品店です。
そのお店にはさまざまなものが置かれています。
ものが行き交っています。
けれど、その店にある古いオルゴールはずっとあり続けました。
この骨董品店は、いつから店をやっているのかわからない、オルゴールと同じなぞがありました。
店主は年月が経つにつれて代わっていきます。
けれども店とオルゴールは変わりませんでした。
そして、古いオルゴールは買われていっても、もとの骨董品店に必ず戻ってくるのです。
後に、奏でないオルゴールと呼ばれ、さまざまな伝説や謂われを生みました。
今でもなお、骨董品店とオルゴールはどこかで存在しているのです。
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