プロローグ

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 少年は真っ赤な世界で、瞳を閉じて理解する。拒絶する思考もここまでくると抵抗する術もない。  もう死ぬんだ、と。  もう全て終わってしまったんだ、と。  諦めにも似た感情が生まれる。いや諦めるしかなかったのだ。  体から徐々に力が抜ける。胸が苦しい。息が出来ない。  ──運命は全てを知ったとおごる時、終焉を迎える……。  少年はそれを知っていたのだろうか?  力が抜けてグッタリとした少年の耳に、かすかに……だけど確かに声が届いた。鼓膜を揺らす聞きなれぬ声に意識と瞼が呼応する。  瞼を押し上げ、見つめた先には、さっきまで気付かなかったモノがあった。真っ赤な世界にいくつも折り重なる人形の様な、人だったもの。その中にある人影。  二人いたのだ。  真っ赤な世界に人間が。  
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