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「終焉があれば、始まりもある」
男の言葉を聞いているのか分からない程に、うつろな少女。その耳元で何かを囁く男。それと同時に少女の目から溢れる雫が止まった。
男は静かに少女の耳元から離れると、目線を合わせるかの様に少女の目の前にしゃがんだ。そして捉える少女の表情に満足そうな反応を見せた男が続ける。
「終焉を迎えなかったお前に問う。知る勇気はあるか?」
とても強く、はっきりと。
「知ろうとする勇気はあるか?」
凄むわけでもなく、淡々と。しかし少女は動かない。
「何かを知ろうとする時、運命は動き出す。お前に運命を動かす勇気は……あるか?」
男の問いに少女は微かに動いた。少年の位置からは見えないが、確かに口を開いて何かを告げる。淡々と、感情など無いように。
男は高笑いをひとつ紅い空へ放つと、少女の腕を持ち上げた。そのまま力任せに少女を立たせると、
「最高だ!!」
と叫んだ。
少年はかすれ行く意識の中で、男の笑い声を聞きながら、少女の揺れる茶色の髪を見つめる。少女は男の後ろに、白かったワンピースのスカートを揺らしながら、フラフラとついていった。
ふと歩みを止め、少年の方を振り返った少女の顔を一瞬見て、少年の意識は途絶えた。
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