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今まで馬鹿にしていた同級生達は、自分が籠の中の小鳥でいる間、遥かに多くの経験をしていた。学校という場で学び、塾という場で学んで来た薫だったが、一人の友人を作る事さえ、出来ていなかった。作ろうともして来なかった。あきらめの感情の中に常に潜んでいる迷いと孤独。部屋に帰るたびに増えていく手首の傷は、次第に深みを増していた。溢れだす真っ赤な血と鈍い痛みに癒されるのは刹那的なもので、数分たつとまた深い孤独が押し寄せてくる。 「こんなんじゃ足りない・・・。」 閉めきった、薄暗い部屋の中で、薫は一人つぶやいた。
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