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「起きてる?」
あ…彩悟くんの声がする。
まぶたが細い糸でひっぱられるようにして、しゃんなりと目を開く。
いつもどおりの天井、カーテンレールには薄いホコリ。みどり色の年季の入ったカーテン。蛍光灯のカバーにはオレンジの豆電球の光りで小さな虫の陰が映った。
うすっぺらなパイン材の机にはノートやら化粧水やらが散乱し、さっきのホットミルクのカップがそのまま置いてある。
薄いピンクのシーツ、すみれ色の枕カバー、猫のキャラクターの目覚まし時計。床には脱いだままのジーパン。畳の感触はひんやりとしていそう。
目を閉じる前と開いた後で違うところは何もない。ただ壁と私の間に僅かな熱を感じる…。
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