四月朔日に嘘を吐く

5/7
13人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
揺ら揺ら揺られて、流されて。 車で揺られ、上機嫌な校長先生とやらの鼻歌を聞き流しつつ、数十分。 「はい、とーちゃく」 なんとも気の抜けた校長のアナウンスと共に車を降りる 着いた場所は軽食屋と喫茶店を合わせたような店。 【トラットリア:三日月の止まり木】 三日月に黒い鳥が止まってる絵が書かれた看板、 その看板にはそう書いてある。 「まあ積もる話は中でしましょ」 カランコロンとベルの音を立てながら中に入っていく校長 蒼髪の子と担任もそれに続く。 「おはっよー!」 「只今準備中で…」 「はぁい、連れて来たよ。あのじっさまが言ってた子」 「…なんだ龍那か」 「なんだって…言ってたじゃない、今日だって」 「あんたにしては来るの早いわね、珍しいから思わず反応したじゃない」 「…わたしって何時もそんなに遅い?」 「常々寝坊してんじゃん、あんた」 「…ま、まあ大事な時は遅刻してませんから。うん」 「そこはまあ、認めてあげるけどね」 声をかけた校長に対して、妙齢の女性が応対をする。 友人かそれ以上の親しみを持って。 「…もうすぐ準備も一段落するからそこにかけて待ってて」 女性は入り口で呆気にとられてる蒼髪の子と、 何時も通りだなとのんびりしていた担任に眼をくばり 4人用のテーブルに誘導する、それに従い席へ座る3人 「もしかして」 「そ、ここで働きなさい」 「・・・」 ここに来て薄々感づいていた事を言う蒼髪の子 それに同意する校長 「…ふぅ」 風に流されて止まり木に止まった鳥のように、 とりあえず今は何も考えないことにした。 風はまだ止んでいる、春の日差しが差し込む窓辺の席で。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!