四月朔日に嘘を吐く

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問いかけられた、蒼髪の子 考える、自分で良いのかと 考える、こんな人間が働いて良いのかと 考える、考える、考える 思案を続ける蒼髪の子に女性は言う 「…何ならしばらくお試しでやってみたら?その方が今ここで考えるより前向き だと思うわよ?」 「…けど」 「ふふ、不安なのね。最初はみんなそうよ、でも一歩踏み出してやってみなくちゃ結論なんて早々出ないわよ。これ人生の先輩からのアドバイス」 「さすがにいい事言うねぇ、姉さんは」 「あんたはには負けるわ」 「それほどでも!」 「皮肉よ」 「あ、そうですか…」 「相変わらずだなあんたら…」 大人たちが雑談を始める中 蒼髪の子は一様の答えを出す 半分の諦めと、半分の何かで 「じゃあ、試しにやってみる、かな」 「…それでいい?自分は納得した?」 女性は優しく聞いてくる 自身の事を考えてくれてるやさしさにあふれる言葉に 心の中で自身に向けなくていいのにと嘆息しながら 「解らないけど、納得するためにも、かな」 「うん、それでいいと思うわよ、何事もチャレンジ!」 「あーこれであのじっさまに小言言われないーありがとー■■ちゃん」 「…っ苗字で呼んでください、よ」 本当に不意打ちだった 聴きたくないのだその言葉だけは 認めたくないから、逃げたいから、許せないから 自分自身を保つためにも 「…うん、解った。ごめんね慈音ちゃん」 以外といえば以外だった そんな事言うなよと言いかねない人物だと思っていたから 「さて」 今までのんびりといつの間にか持ってきてたコーヒーを飲みつつ先生は言う 「話も終わったし、お昼時になったしここで飯食わしてもらうかぁ」 「それいいね、さんせー」 「だろうと思ったよ、待ってな。いつものでいいね?」 「おまかせした!」 「おなじく」 そういって女性は席を立ち奥の方に歩いていく しかしノリの軽い大人たちである 蒼髪の子は思う もしかしたら自分のためにそうしてくれてるのではないかと もしそうだったら? たぶん自分を許せないだろう、だから考えないようにした だから自分に嘘をついた 嬉しいなんて今の自分は思ってはいけないから 止まり木の鳥は何を思って羽を休めるのだろう そう思いながら嘘をついた 自分自身に
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