四月朔日に嘘を吐く

2/7

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
四月、それは出会いの季節。 否応無しに変化の訪れる時期。 時間は朝の6時、日の昇りは早くなったといえど未だ寒さの残る時間。 ここは公民館? …否 この田舎町唯一の学校である。 その敷地内、の中の玄関か。 ぼんやり立ちすくむのは蒼い髪のその子。 便箋ひとつ握り締めて、玄関が開くのを待っているのかぼんやり扉を見つめている。 暫くして扉の内側から鍵を開ける金属音が鳴り、開き。 中から穏やかな雰囲気をまとった青年が現れた。 引越しの時車の中にいたもう一人の男の人。 「ん、もう来てたのか…待たせたみたいで悪いな、まあ入りな」 やや寝ぼけなまこでその子に語りかけ、その声に引かれ中に入る。 …建物の中は大きな下駄箱を横に構え、正面は大広間、成る程授業するのはここだろう その大広間を横見に廊下を歩く、ふと青年は一つの扉の前に立ち止まり。 「そうだ、お前飯食ってないだろ? ちょっと待ってな」 そう云い給湯室と書かれた札が付いた扉の中へ入っていく。 (何も言ってないんだけど、な) 取り残されて一人ごちる蒼髪の子。 ふと何か懐かしいものを感じた、けれども、もうそんな感情は持ち合わせていないと、自嘲。 10分程度か、時計を生憎持ち合わせてない。 給湯室から彼が出てきた、右手に包み、左手に薬缶。 「こんなに早く来るとは思わなかったからな、一緒に朝飯にしよう。約束の時間まで時間あるしな。」 と穏やかに話す、邪な気なんて一切感じない笑顔で。 「まあ、いいけど」 目を逸らしつつ、蒼髪の子は同意。 「んじゃ、こっちに食堂あるから其処でな。」 ん、と軽く頷き彼の後を付いて行く。 どこか懐かしさを感じながら、表情は変えずに。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加