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ぱしゃん、と水が跳ねる音。
傘も持っていないのに雨に降られてしまった…。
でも水が跳ねて足にかかるのも気にならない。
いつものように市場で食料を買ってきた帰りで、両手にで抱くように荷物を持ち、いつもの路地を走る。
あたしは息を切らしながら、廃ビルのようなわが家の扉を開ける。
「ただいま~ッ!ちょっと、誰かタオルちょうだい!」
ちょうどいいところに、ライツがロビーから2階に繋がる階段に座り、煙草を吸っていた。
「あ、おかえり~。アインスさん。」
青い髪の、人懐っこい青い瞳でライツは悪戯っ子の様にニコッと笑って「ちょっと待ってて」と軽くてを振り、煙草をくわえたまま、タオルを取りに行ってくれた。
「はい、どうぞ、姫。」
帰ってきて、ライツはバスタオルを肩を覆うようにかけてくれた。
「ちょっと…その呼び方やめてよね?」
クスクス笑って、ライツを見上げる。
「え~…そうかなぁ?似合ってると思ったんだけど。」
ライツは少し拗ねた顔をして。
「ま、いいや、飯の材料、厨房持ってってやるから、体拭いたら着替えして。風邪引くと次の仕事に差し支えるよ?何件か…俺も下調べしてきたしさ。」
少し眉根を寄せ、あたしの荷物を取り上げると、また奥へ行ってしまった。
あたしはライツのその少し不機嫌そうな表情が気になった。
「そんなに…今度は大変な仕事なのかな…?」
あたしは…この始末屋の長、マスターに会いに行くことにした。
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