die Asche~灰~

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自分の部屋で着替えをして、コツコツ足音を立て、階段を昇っていく。   書斎のドアを叩くと、中から「どうぞ?」と低い声がする。   ドアを開け、   「ただいまぁ~マスター。」手を振り「今度の仕事、どんなのきてるの?」   「ん?んーあぁ…そうだな。まぁ…いつもと変わらない…。」   マスターは資料をペラペラとめくりながら言った。   マスターはまだあたしが10歳の時、親を無くして灰だらけのあたしを、スラムと化した路地裏の街で拾ってくれた。本当に、大切な人。   マスターの後ろに回り込んで肩を抱き寄せて資料を覗き見る。   「ホントだ。変わんないけど…、最近依頼増えてきたよね…。」   「それだけ…世間がおかしくなってきてるんだよ。」   「だが…」と続け、あたしの顔を振り返って見上げ、あたしの頬に手を添えてキスしてくれた。「お前は変わらないな…。」   あたしは一気に頬が熱くなるのを感じて、恥ずかしくなったけど見つめられる瞳からは目が離せない。   「ぷっ…くすくす…っ」   ついに笑ってしまった。マスターも微笑みかけてくれるので、今度は自分からキスをした。   ふわっと香る煙草のにおい、優しく包み込んでくれる腕、この人のためだったら何だってする…。     ━━例エソレガ人ヲ殺メル仕事ダトシテモ━━
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