不思議の入口

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千里の寮は一部屋に4人ずつで暮らしている。 二段ベッドの下で、いつも皆が寝たのを確認してから懐中電灯で絵本を照らす。 今日も慣れた手際でそうしていた。 その時 「千里~?まだ起きてんの?」 二段ベッドの上から声がした。そして目が合う。 二段ベッドの上にいるのは噂好きの静岡出身の良子だ。 「あっ…いやっちょっと…」 「あれ?それってさぁ、なんだっけ?小さいとき読んだ…不思議な…?なんだっけな?なんでそんなの持ってるのぉ?」 寝ぼけてるのを期待したけどこういう時に人間は嫌なところを突いてくる。 「あっうんっ…これね、さっきゴミ箱にあってさっ懐かしいから読んでみたのっ今からまた捨てようと思ってねっ」 すかさずドアを目指して 「ちょっと行ってくるっ」 部屋を出た。 良子が何かを言っていたが耳に入らなかった。 良子なんかに知られてしまった。明日には私は皆の笑われ者…それにもう夜に絵本がよめない、良子に嘘言っちゃったから… 千里は小さな絶望を感じた。 そして小さなため息をついて心の中で思う ~不思議な世界が本当にあればなぁ~
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