雲一つ無い夏の空の蒼さ

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みを進めているのは自分の意思、つまり脳からシグナルが発せられて脚を交互に踏み出しているのも確かなのだが、そこに歩幅を小さくしようとする意思が全く反映されないのだ。シナプスが複雑に繋がり合う脳回路の中で挙動に変化を与えようとするシグナルだけは何の違和感もなく脊椎の手前でミュートされているようだ。 「暑い…」 殆ど無意識に漏らした一言を言い終えると、木陰は北東に傾き、幾分伸びていた。 「またとんだか…」 もはや慣れきった時間のジャンプに半ばウンザリしながら瞬時に傾いた影の先に目線を配ると、近所の主婦らしき女性が、まだ歩みのたどたどしい
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