信長との出会い

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信長は、その修羅のような空気とは対称的に、袴を履かず、ボロ衣を身体に巻き付けたような実にだらしない格好で登場した。   周りが呆気に取られているのを尻目に、信長は信秀の位牌の前に立った。 彼は、【万松院殿桃巌道見】と書かれた父の位牌を、 黒い瞳でキッと睨み付けた。   『信長よ…※吉法師よ。  尾張を…いや、天下を掴め』   位牌がそう信長に語りかけた。 この声は、信長の心中に響いただけで、周囲の者には聞こえなかった。 信長は、コクリと頷くと、 香盆の中の抹香を手に取り、 その手を位牌の前で高く掲げ、   『天下はこの信長の手で…  先に天下の代価を親父に  呉れてやろうぞ』   と囁いた。 そして、その抹香を位牌に 思いっきり投げ付けた。 その衝撃で位牌は倒れた。   信長は舌打ちすると、 その場を疾風のように去って行った…     ※信長の幼名
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