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窓から見える空には蝙蝠が飛び回っていた。ボクの蝙蝠ではなく、野生の蝙蝠だ。
それに混じり、いやな気配が夜空をさ迷っている。赤い月の下を、ボクと同種のやつが飛んで行った。
ヴァンパイア。
ボクの他にも、この街に来てたんだ。そう言えば、と中年の男の話を思い出す。本当にヴァンパイアはどこにでもいるんだなぁと他人事のように思う。
ヴァンパイアが移動した先に人間の気配があって、間もなくしてその気配がヴァンパイアのそれと共に空へと消えた。
きっとヴァンパイアが餌を狩りにでもきてたんだろうな。
。
"人殺しは嫌い。けど私は君を許すよ。大丈夫。あんながどんな気持ちでいるか分かっているから"
…なんだろう。胸がもやもやする。ヴァンパイアが人を殺すなんて当たり前のことなのに。
夜空に光る赤き月が街を見下ろしていて、それが夜の支配者であるようにも思える。
ボクはモヤモヤする気持ちを振り切ろうと、窓からそとに飛び出した。目を光らせ翼を生やし、月を真似て街を見下ろしてみる。
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