醒めた男

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 ――だとすると‥‥  何かこういうことには覚えがあった。以前にも夜中に突然起きたことがある。それは夢を見ていた時だった。  目の前で自分が誰かと闘っていた。普段から喧嘩などする人間ではない。その自分が、夢の中では愉しそうに誰かと格闘しているのだ。直ぐに夢であることに気付いたが、第三者視点だったせいか、もう一人の「僕」の行動は制御できなかった。  そうして「僕」が一番気合いの入った一撃を加えようとした時だった。「僕」の攻撃が相手に当たると同時にゴツッという衝撃が「自分」の拳に走った。  びっくりした自分は途端に目覚めた。すると、自分が壁を殴っていたことに気付いた。それは無意識の内に、夢の中の「僕」と同じ行動を取っていたらしかった。  また、夢の中で自分が喋っていた言葉が実際に発せられていて、その自分の声で起きてしまったということもある。
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