醒めた男

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 そんなこともあったので、今回も何か飛び起きるような夢を見たに違いないだろう。しかしその内容は思い出せない。自分の見た夢とはいえ全く想像もつかなかった。  ――どんな夢だったんだろうか。  死ぬ夢だったりするのだろうか。それとも、誰かを殺す夢だったのかもしれない。何か衝撃的な夢を見たに違いない。目を閉じて想像の世界を広げる。  ビルが立ち並んだ都会的な世界、青々しい草原が続いている広大な世界、優美な建造物の中の閉じた世界、真っ白がずっと続く世界。想像した世界は次々と移り変わっていく。  そうやって瞼の中の世界に変化をもたらしていると、微睡みを覚え始めた意識が段々と深いところへ向かって沈んでいく。  そんな中、ぽつりぽつりという音が耳に入ることに気付いた。いつの間にか外で雨が降っていた。耳障りな音ではない、心地よいものだった。  それに包まれるような気持ちで、眠りに就いた。
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