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絶対的距離…
それはある週末のことだった。
いつものように部活で球拾いをしながらMさんと会話をしたり、他の仲間とはしゃいだり。
そんなこんなで部活も終了…普段ならそそくさと寮に戻り、風呂と食事を済ませなんでもない時間を過ごすのだが、この週末は久しぶりに自宅へと帰るため着替えを済ませ部室を出ようとしていた。
そこにはMさんがポツリ…そう彼女は自宅通いで正に今帰ろうとしているところだった。
だいぶ話せるようになった2人は当たり前のように帰路を共にした。
その途中彼女との会話に僕は今までの人生で一番の衝撃を受けた。
…それは彼女が中学生の頃の話、友達のほとんどがそうしていたように、彼女も塾に通っていた。
そこにいた大学生バイトの教師と関係をもっているらしい。歳の差は5歳はあるだろうか?もちろん犯罪である。しかも彼女は訳も分からないまま処女を受け渡し、男には彼女もいるというのにその家に通いご飯を作ったり泊って床を共にしているらしい。悪いこととは分かっていながらも…Mさんは言っていた
『私、愛人28号なの…』
もちろん笑えるはずも無い… 駅までの僅かな時間僕は頭の中で繰り広げられる想像もしたことのない世界にただただ圧倒されていた。
でも何故か疑いはしなかったし、嫌悪感もなかった。
ただ2人の間には越えられない・越えてはいけない壁が確かにあった。
その頃すっかりMさんに惹かれていた僕は
『じゃあ僕が助けてあげるよ!』
今思うと何故あんな言葉が出たのかは分からない。
ただMさんの話を聞いてほってはおけなかった。そんな話あってはいけないことなのだ。そんな世界にいてはこの先ろくなことはないのだと…
Mさんはあっさりと答えた『傷つけちゃうから深入りしない方がいいよ!気持ちはすごく嬉しいんだけど…』
僕はとてつもなく後悔した…その日に帰ったことに、Mさんの話を聞いたことに、そして正義感ぶって発した言葉に…
それからというもの彼女との距離は近付くこともなく、かと言って遠ざかることもなく、永遠に交わることのないような距離で進んで行くしかなかった。
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