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「えーと、続けて良いか?」
「あ、はい。お願いします」
「これはオレの姉から聞いた話だ。ウチの姉は雑貨屋に勤めているんだけど、其処に出るって言うんだよな」
「出るって…」
「まぁ霊だわな、幽霊。其処に出るのは子供の霊なんだけど、おもちゃ屋とか、雑貨屋とかそう言う楽しそうな場所には特に子供の霊が来やすいんだそうだよ。やっぱり死んでてもそういうのが好きなんだろうな」
…来やすいってどういう事だろう。誰か確認したって言うんだろうか?そんなことを気にしながらも僕は先輩の話を聞いた。
「先日もさ、お客が居ないのに店にある商品が落ちたり、回転式の棚が動いたりしていたんだそうだ。勿論、屋内の店だから風なんか吹いていないし、空調だって其処まで強くない。でも確かに物が動いている。で、姉は『あぁ、これは何か居るな』って思って音のする辺りに耳を澄ましてみたんだ。ウチの姉は所謂、霊感の有るタイプでな。集中すれば見えないモノを少しだけ察知することが出来るんだよ。特に此処が優れてる」
アネさんはちょんちょん、と自分の耳をつつく。聴覚と言うことだろうか。『見える』と言う話は良く聞くが、『聞こえる』と言う話はあまり聞いたことがなかった。それだけでも珍しくてちょっと興味が深まった。
「最初に聞こえたのは、パタパタ、という軽い足音。音を聞くことが出来たら、今度はその音に集中する。上手くすれば『相手』の輪郭が見えるはずだ。毎回成功する訳じゃないけど、その時は上手く行った。先ず、うっすらと脚が見えた。小さな足だ。きちんと靴と靴下を履いている。その脚はキーホルダーが気になるのか、その辺りをずっとうろうろしていた。それで、暫く姉の方もどうしたもんかと悩んでいた。すると、脚がこちらに向いた。姉に気付いたようだった」
アネさんが一度話を切ってお茶を飲んだ。アネさんの話し方が上手いせいか、茶々を入れる者は居なかった。みんな居心地の悪さを感じながら、話の続きを待っている。
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