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「やばいかも知れない、そう思った瞬間、店の奥から店長が現れた。大人が増えたことが怖かったのか、脚はまたパタパタと逃げていってしまった。姉は何だか悪いことをしたような気になって店長にその話をすると、店長は大丈夫だと言った。何故そんなことが分かるのか、と聞いたらこう返ってきたそうだ。『あの子はこのところずっと居るから、気にせずまた来るだろう』とね」
…話が終わった瞬間、何とも言えない倦怠感が襲ってきた。多分、この話は大して怖くなかった。でもアネさんの話し方のせいで引き込まれてしまい、やたらと疲れてしまったのだ。僕らはハァ、と息を吐いて体を伸ばしたりした。
「あんまり怖くないっスね」
同期の一人がそんなことを言い、アネさんは『アラ、残念』と言って笑った。取り敢えずその場は繕われ、話題は心霊スポットがどうした都市伝説がなんだと別の話題にシフトしていった。
帰り道、話の和から抜けていた先輩と一緒になったので飯でも食いに行くかということになった。其処で僕は気になっていたことを聞いてみた。
「何で先輩、アネさんの話聞かなかったんですか?」
「ん?あー、アネの話?」
先輩はポリポリと顔を掻いている。言いにくいことなんだろうか。僕はもっと突っ込んで聞いてみることにした。だってあんな良くある話に先輩たちが本気でびびるとは思えなかったのだ。
「話しにくいことなんですか?」
「いや、話しにくいっつーか…後悔しないなら」
「しません」
即答すると、先輩はまた溜息を吐いた。そして嫌そうに口を開いた。
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