一つの機会

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それから、結局悠紀と遠藤は二人で暗い廊下を、遠藤の落とした眼鏡を探し回り続けた。 「…あ!」 悠紀は暗闇の中に一瞬、きらりと光が反射するのを見て、思わず声を上げた。 直ぐさま、光の見えた場所に駆け寄り、手を伸ばす。悠紀はこれが遠藤の探しているものだ、と確信した。 「部長!ありました!」 それを拾い上げるとまた、悠紀は遠藤のもとへと戻っていく。 そしてやっとのことで探し当てた眼鏡をそっと遠藤へと受け渡した。受け取った遠藤は、すぐにそれをかけた。 「ああ、良かった」 「ええ」 「君がいなかったら、俺は帰れなかったかもしれないな。…ありがとう」 「いえ、俺は……」 遠藤の、心底安心したというような表情。それを見た途端、どきり、と悠紀の心臓が一度だけ大きく鳴った。 「―先程は全く顔が見えなくて名前を聞いてしまったが」 「え?」 「なるほど、佐倉とは君のことだったのか。新入社員の中では一番良く働いてくれているな」 遠藤は穏やかな微笑を悠紀へと向けた。悠紀は少しの間呆けていたが、我に返ると、慌てて頭を下げた。 まだまだ及ばない。そう思っていたはずなのに、まさかそんな言葉をもらえるなんて。 これはまさか夢なんじゃないか、と思うほど、先程から幸運続きである。
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