メモ用紙

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書類の作成を早々に終え、悠紀はそれを遠藤へ渡すべく、立ち上がり遠藤のデスクへ目を遣ったが、そこに遠藤の姿はなかった。周囲を見回しても結果は同じである。 近くの同僚に尋ねてみると、ほんの少し前に出たきり戻っていないとのことだった。タイミングの悪さに悠紀は思わず肩を落とした。 「俺ってツイてるのかツイてないのか…」 溜息混じりに呟きながら、自分のデスクに戻ろうとした。 「佐倉さん」 不意に名前を呼ばれ振り向くと、同僚の女性が手招きをしていた。悠紀は何だろうと思いつつその人のもとへ歩を進めた。 「…遠藤部長、先程第二会議室のほうに行ったみたいですよ。もう、戻られるかと」 そう言って、女性はにこりと微笑んだ。それにつられるように悠紀も微笑すると、礼を言って軽く頭を下げた。 それから、遠藤をここで待つべきか、時間を見計らって会議室までの道をそれとなく歩いて探してみるか、悠紀は少し悩んだ。後者のような考えが浮かんだのは、人の多いオフィスより、廊下で偶然を装うようにして出会えば、少しばかり多く会話が出来るかもしれないという悠紀のエゴであった。 「…ちょっと出てきます」 結局、悠紀は周囲の人間に一言伝えると、書類を片手にその場を後にした。
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